iBS外語学院40周年記念実行委員会

特別企画「オモテナシについて考える」― Naho Kawakami, Hinako Kuroda

2020年といえば、とにもかくにもオリンピック。海外からのゲストもさらに増える予感の年に向けた特別企画「オモテナシ」。「ホスピタリティ」ってなんでしょうか?海外で働いた経験のあるお2人に、寒空の二子玉川でおでんを食べながらお伺いしました。

“オモテナシの真髄って、なんですか?”

Words: Naho Kawakami, Hinako Kuroda

――――さて今年はオリンピックイヤーです。来日する外国人も増えて街中でも多くの外国人を目にします。滝川クリステルの「お・も・て・な・し」はインパクトがありました。いろいろなキャリアをお持ちのお二人、まずはiBSの入学のきっかけから教えてください。

黒田:どうしても行きたかったアメリカの音楽大学に落ちたんです。技術面よりも英語力に問題があって、あともう少しのところで合格に手に届きませんでした。そこで、英語力向上はもちろん、それまで音楽以外にも可能性が広げられるのでは……と期待を持って入学したのがiBSでした。ここで、入学決めた私、本当に自分を褒めたいです(笑)

――――私は逆に後悔してるんですけど……。

川上:私は、iBSを卒業してオーストラリア留学後、タイのリゾート「The Sarojin」で日本人ゲストリレーションとして勤務していました。その後「アンダーズ東京」の宿泊部でチームリーダーを務めて、そのあとに今の職場である(有) Come on UPでエリアマネージャーとして関東圏のシェアハウス運営管理を行っています。

――――とことん、なんだか宿泊にこだわっていらっしゃる。(笑)しかも、質問に正確に答えない川上さん。(笑)

一同:(笑)

――――ところで、今回の企画は「おもてなし」です。ニッポンのおもてなしと海外のおもてなしって違うと思うんですね。お二人とも海外でおもてなしをする側でした が、その経験からどういうものを感じました? やっぱり、ニッポンのおもてなしは違う?

川上:ホテル業界に勤めていた時も今も、あまり「おもてなし」をわざわざ意識したことはないんですよ、実は。逆に海外の方のおもてなしというのはカジュアルなのでとても新鮮でした。スタッフとゲストが対等に向き合える、着かず離れずのほどよい距離感というか。

黒田:私が海外で感じたおもてなしって、やっぱり人間味のある、頭からでなく心で動けるものなんじゃないかなって思います。タイって本当にリピーターが多いんですよ。もう、セカンドホームのように毎年訪れる人がたくさんで。なんでそんなに好きなのって聞くと、素晴らしい自然もそうだけど、やっぱり、人なんだという答えにたどり着くんです。こここで迎えてくれる人、出会える人、そしてその人達がつくる環境って、なんだか本当に素直で純粋なんですよ。日本だったら、何もかもが美しくて綺麗で、100%の完璧を求めるサービスこそが素晴らしい、どちらかというと外見、形を重視したものが求められているんじゃないかと思います。あと、当たり前のように、お客様は神様……って。

――――お客様は、日本では確かに神様ですよね。だけど、そこにもてなす側ともてなされる側の「イーブン」な関係性が日本では希薄な気がします。

川上:以前の職場であるタイのホテル 「The Sarojin」 では、毎週全ゲストを招いてのカクテルパーティーを行っていたんですよ。そのパーティではゲスト同士だけでなくゲストとスタッフとの交流の場であり、一緒にカクテルを飲みながらお話をする、なんてことも普通にありました。ほかの海外リゾートでもこういったイベントはよく開催されていると思いますけど、日本のホテルではゲストとスタッフが一緒にカクテルを飲みながら談笑、なんて想像し難いですよね。

黒田:私もホテルの仕事でやっぱり嬉しかったのは、ゲストとの出会いでした。日本人のゲストには、私の存在やお手伝いをさせてもらうことによって、喜んでいただけることが本当に嬉しかったし、私だからこそできることを探すのがとても楽しかったです。そして、多国籍な観光客タイ・カオラックだからこそありましたね。そしてゲストからお友達になれる機会も多かったこと、これはとても幸せだったなと思います。

――――人をもてなすということは、すなわち両方に人間力が試されますよね。お金を払っているのに、って思っているうちは本当の「ゲスト・リレーション」はお互いに生まれないのかもしれません。

黒田:例えば日本人のお客様とは、やっぱりどこか、“ホテルの一スタッフ” といった感じで会話が成り立つことがほとんどです。なんとなく、私という色が出ていけないというか。外国人のお客様だと、なんがか自然に“私”が出ていけるんですよね。お客様からもホテルのスタッフなのに・・・というような感覚を日本人のお客様ほど受けないんです。でもこれって言語のせいかもしれませんね。日本語の敬語は美しいけれども、無意識に壁ができてしまう原因のひとつかも。

――――海外で働くことって、やっぱり色々な苦労があると思うんです。どうですか?

川上:新しい世界でいろんな経験をし、いろんな人と出会っていくうちに、新しい自分との出会いもあると思います。意外とこれが面白くって、その変化を楽しみながら働けるといいですね!

黒田:すっごくシンプルだけど“あきらめないこと”だと思います。逃げ出したいこともたくさん出てくるし、言語、文化、生活習慣、いろんな壁があるけど何事も辛抱強くあきらめないこと。どんな失敗したって、息がある限り死ぬわけじゃないんだし。本当に何かあったら、日本って帰る場所があるんだし。あ、あとは笑顔!顔が笑えば、心も脳も刺激されますよ!

――――最後に、いま日本人は世界でどのような立ち位置に置かれているとおもいますか?以前と比べるとそのプレゼンスが下がっている気がしますが。

川上:グローバル化しても、まねごとではなく日本人としての威厳や誇りを失わない ことが大事かなと思っています。今年は、日本の存在感を改めてアピールできるチャンスだと捉えています。私もシェアハウスの生活を通して少しでも海外の方に日本での生活を楽しんでもらい、文化を理解してもらえたらいいなと思いながら日々仕事に取り組んでいます。

黒田:正直、 今と過去がどうかって聞かれても、直接的な答えがみつかりません。 ただ私はここカオラックに来て、日本人に囲まれている環境がほとんどなくなりました。それが自然になった今、帰国して同じように発言したり、振る舞いだと「あれ、言い過ぎた?ちょっとオーバーだった?」ってことがよくあります。あとは、結論にいたるまでが長いなとか。(笑)クリアな発言だったり、周囲にどう思われるかではなく、はっきりとした意見が言いづらい国、それが世界での立ち位置が確立できない理由のひとつなのでは、と思います。

Naho “Melody” Kawakami

1987年生 32期卒
iBS卒業後、海外のホテルにてゲストリレーションを経験。帰国後はアンダーズ東京の職を経て現在、シェアハウス運営会社(有)Come on UPに在籍。

Hinako “Carrie” Kuroda

1991年生 37期卒
現在、サーフボードメーカーSUNOVAに先月から正式に就職。「毎日、新しいことばかりで新鮮だし、たくさんのことに関わらせてもらっているので、とても刺激的で充実しています」(本人談)

KONA
RECOMMENDS