iBS外語学院40周年記念実行委員会

「イギリス・ノルウェー・ヴェトナム・ニッポン」

卒業生からの「RELAY COLUMN」第2回は33期卒業のこの人から。学ぶことに貪欲な彼女は、一体何を世界から学び取ったのか。ホーチミンの空の下、バインミーをかじりながら回想してもらいました。

Words : Yukiko Kafka Wada

思い返してみれば、私にとってiBSを通って海外に出たという経験は、自分を救うということとイコールだった。

父の仕事の関係で、アメリカ・テキサス州ヒューストンで2歳から4歳まで過ごした後に鹿児島の幼稚園へ編入した。入園した初日のことを今でも覚えている。既に出来上がっている個々の仲良しグループや、皆と同じ感覚を持ち、行動をしないといけないという空気感。幼稚園の集団下校時に2列になり、話したこともないような隣の子と手を繋いで帰るということが嫌だった。

閉塞感と違和感を感じながら、小学校時代より不登校気味になり、県内唯一の単位制高校に合格し、パンクロックやヴィジュアル系に走りつつ、やりたいことも進みたい道も決まらないまま高校卒業を迎えた。

1年間大学の聴講生をしながらぶらぶらとしていたところ「やりたいことないなら、南先生のところに入学してみたら」と父の紹介でiBSに入学した。

人間力のある人の下で学ぶということはこんなにも楽しいことなのか、と生まれて初めて感じた。

対人関係についても大きく変わった。以前の自分は斜に構えて生きることが傷つかずに済む方法だと思っていたが、自分が本当はそうではなく、周囲と良好な関係を作っていき、本音で話せる友人を欲していたことを認識した。そして、正直でオープンに、誠実にあろうとすれば、そのような人たちと出会えることを学んだ。

iBSからは何回も、「ひとりひとりに無限の可能性があり、望み進めばどんなことも可能になる」というメッセージを送ってもらった。

自分は変われる、変わっても周りに受け入れてもらえる、という環境を作ってもらえたiBSの先生と仲間たちに、改めて心から御礼の気持ちを伝えたい。そしていつも味方でいてくれる家族に、一番。

学ぶことがこんなに楽しいことなら、もう少し学びについて学びたい。

日本とは違う教育を学びたい。色々な国の教育を学べるならヨーロッパがいい。

その中で英語圏であるならイギリス。ということで、留学資金を貯めるため3年間iBSで勤務し、周りの多大なるサポートをいただき、なんとかイギリス・ヨークで大学生活を始めた。

日本人では初という対留学生への奨学金を大学からもらい、そのお陰で大学でのイベントやアルバイトに携わる機会が多くあった。

そのきっかけで出会った奨学金のスポンサーには、大学卒業年に、いよいよ学費が本当に払えず、せっかく入学した大学から、退学か休学を考えていた時に「返せるようになったら返してくれればいい」と卒業できるまでの学費を貸していただいたことは、いつまでも忘れられない。

イギリスの大学は3年制なのだが、その2年次にErasmus Exchange ProgrammeというEU・EU協力関係国間の交換留学制度に参加した。EUの大学生たちの留学を推進しようという制度なのだが、日本人であっても、EU・EU協力関係国の大学に正規で入学していたら対象となる、留学生にとっては素晴らしい制度である。

しかもこの制度、基本的に大学間の単位を統一できるため、留学した先の単位を自分の所属大学の単位とすることができ、休学扱いにならない。留学中の学費も所属大学に準ずるので、例えば学費無料であるドイツの大学生がイギリスの大学に留学しても無料なのである。更に、毎月一定額の奨学金まで給付がある。アジアにも同様の制度があればいいのに、と思ったものだ。

私の留学先はノルウェーで、80か国以上からの留学生たちとの出会いがあった。

オーストリア人は自分たちが話す言葉はドイツ語ではなくオーストリアドイツ語であるということに誇りを持っていること、アゼルバイジャンの女性は情熱的で美しいが、怒ると手が付けられない炎と形容されること、ノルウェーの社会福祉は充実しているが故に、働かなくても生きていける、と、ニートが増えていることが社会問題になりつつあることなど、その国の人たちから教えられ、初めて知ったことが数多くあった。ノルウェーは経済的に裕福な国だが、大学の学生寮付近には、東欧からの仕事を求めて移民として来た人たちも多くいたし、街のATMに並んでいるとジプシーが小銭の入ったコップを鳴らして、入れろと催促してきた。

2014年に大学卒業後、教育関係の民間企業に就職したいという思いで、ヴェトナム資本の対日本への人材育成・派遣・紹介企業に就職した。現在は、日本企業へ就職したいヴェトナム人と、ヴェトナム人を採用したい日本企業に対してのコンサルティングを行っている。

私の顧客先は製造業が殆どで、これ迄、ヴェトナム人の受け入れに成功している会社と、苦労している会社を見てきた。苦労している人たちは総じて「日本人ならこうする。日本の考え方はこうなのに」と言っていた。

自分が海外へ行く側であろうと、海外からの人材を受け入れる側であろうと、持つべきは、自分の常識が世界の常識ではないこと、に尽きると思う。

イギリス、ノルウェー、ヴェトナム、日本、どの国も、さまざまな課題を抱えつつ、問題があれば解決のために奮闘して、どうにかこうにか進んでいる。

メディアを見ていると、世界は問題だらけのように感じられるが、“Factfulness”のロスリングによると、100年前と比べ経済、就学率、自然環境、あらゆる面で、世界は確実に良くなっているそうだ。

13年前にiBSへ入学するまでは、自分の人生頭打ちかな、と何となく諦観していた。しかし、可能性は無限で、やりたいこと、なりたい自分へ、自由になれる。iBSで助走をつけて、海外へ出たことが「世界も自分も良い方向へ進んでいる」と思えることにつながった。

自分の今ある世界がすべてではない。知らないこと、知らない世界へ行く準備をし、最初は受け入れづらくても「まぁいいか」と少しずつ自分の許容範囲を拡げていく。そうするといつの間にか自分のComfort Zone自体が広がり、いつの間にか自分の世界が広がっている。

世界は広くて狭い。そういうことを、International Brilliant Studentsの一人である自分は感じていきたいと思うし、同じように救われる人が一人でも多くなれば、世界は一層、確実に良くなると確信している。

Yukiko Kafka Wada :33期卒

iBS外語学院を卒業後、イギリスやノルウェーに留学。現在、ヴェトナムから人材派遣をメインとする「ESUHAI Co., Ltd.」にコンサルタントとして勤務。ワインに造詣が深く、ワインエキスパートの資格も取得。

KONA
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