iBS外語学院40周年記念実行委員会

「あなたは今、何を考えていますか?」

たまに、この人の頭の中を覗いてみたい、そんな風に思わせる人がいます。相変わらず無茶振りのこのリレーエッセイで、ようやく(1月29日)入稿した「大物」のエッセイ。備さん、あなたは今、何を考えていますか?

Words: 備 “Teddy” 耕庸

堀江貴文氏の発言でふむふむと思ったことがある。同氏の動画チャンネルで「自分が本当に心の底からやりたいと思えることを見つけるにはどうすれば?」という質問に対して、「学校教育はたまに分岐するものも一本のレールを走る電車のようなもので、多くの人は降りた先の世界を知らずに降りられないが、途中下車をしなければ勝手に進んでいってしまってる。なので色んなことに手を出そう。」というアドバイスだった。

自分を含む多くの卒業生にとって、iBS学院は最初の降車駅だったかもしれない。そこで仲間と出会い、「人生、途中下車をするとオモシロイ」を体感したのは自分だけではないと思う。28期生として卒業後、自分は音楽演奏を録音する技術(レコーディング・エンジニアリング)を学びたくロサンゼルスに渡った。当時レコーディングの現場を見たこともないのに、「学ぶならロサンゼルスしかない」と信じ込ませるほどMD(ミニディスク)に詰めて聴き込んだアメリカの音楽には謎めいた魅力があったようだ。そして渡米後も途中下車と路線変更を繰り返した。短大のレコーディング学科を卒業後、音楽ビジネスに興味が湧いてしまい、「目的地レコーディングエンジニア行き」の電車を降りた。しばらくして再乗車したが、また降りて乗り換えた。その後、様々な駅を経て、今はハリウッド作曲家エージェントと音楽プロデューサーの二足の草鞋を履いている。やっと自分にとって快適な電車を見つけた気がするが、今後も乗り換えて行く気は満々だ。

乗り換え続きの人生の旅、自分なりにハッピーな乗り換えをするための3つのヒントを見つけた気がするので諸兄姉と共有させて頂きたい。

1つ目は「自分軸」を見つけること。一般的に自分軸というと「ブレない心」とか「芯がある状態」という解釈もあると思うが、自分はそんなカッコイイことを語るつもりはない。もっとシンプルで、「自分が好きなコト」や「自分が嫌いなコト」を自分自身が認めてあげると楽になるということ。好きなコトがわかれば、それに多くの時間をかけられるように取り組めばよい。嫌いなコトがわかれば、それにかける時間を減らすように取り組むか、少し好きなコトに近くように取り組んでいけばいいのだと思う。

好きなコトに関しては、とにかく新しいことをイロイロやってみると良い気がする。つまり電車を乗り換えまくればいい。仕事レベルの乗り換えは難しくとも、趣味レベルなら簡単である。自分はすぐに何かを始めては飽きてしまう性格で、これまで趣味と公言して直ぐに飽きた趣味は「手打ちそば」「万年筆カリグラフィー」とキリがない。趣味と公言してしまう自分を甚だしいと思うが、それも自分の性格だからしょうがない。なので最近は「自分の趣味は新しいことを始めることだ」と開き直っているのだが、そのプロセスの中に存在する「自分が好きになったポイント」を抽出することで「自分の好きの原理」に一歩ずつ近付いている気がする。

嫌いなコトに関しては、工夫が必要になる。自分の場合は「洗濯物畳み」だ。残念ながら全くもって興味が持てない。しかし人間は衣服を着用して生活をするため、避けては通れない深刻な問題である。大変遺憾である。そこで洗濯物を畳む時間を減らす取り組みとして、多めに下着やタオルを用意し洗濯の回数を減らした。それでも洗濯を畳む日は容赦無く訪れるので、少しでも好きになれるように、畳みながら楽しめる良い映画やドラマを用意している。外発的なモチベーションがなければ、洗濯物を畳めない自分を情けなく思うのだが、それを認めることも人生である。Foldimateという自動洗濯たたみ機が開発されているそうなので、一刻も早く完成されることを切実に祈っている。

2つ目は「思考と感情の癖」を知ることである。自分を含む多くの人間達は、不自然に感情的になる瞬間があるように見受けられる。その理由の多くは「思考と感情の癖」が原因であり、結果として非合理的な行動に繋がる場合もある。自分の場合、自身が発した意見に対して他人から異なる意見が出た際、時に必要以上に感情的になり主張と論破を試みることがある。坂本龍馬氏がいれば「おんしゃあ、落ち着いて洗濯物でも畳め」と言われるだろう。客観的にみた場合、その感情反射は自分の意見を守るため、そして自分自身を守るための過剰な防御反応なのであり、理由は「自身の無さ」「自己承認不足」にあり、その根底には「他人に認められないことへの恐れ」にあり、更に地脈を掘り進めば「孤独への恐怖」にあると思っている。自分自身の「思考と感情の癖」を見つけることはなかなか難しいのだが、原因を見つけて癖を解いていけば、人生電車の乗り換えも落ち着いてスムーズにできるようになると思っている。

3つ目は「心身の健康」である。どんなに好きな路線を走る電車に揺られても、心身の健康なくしては楽しめない。そのために重要なのは、自分の体も心も健康な状態をキープできる方法を知ることは大切だと思う。その一歩として、体の健康に必要な投資はガンガンした方がいいと思っている。個人的オススメなのは、毎日最も接する時間が多いマットレスである。日々の体の回復率がグッと変わるので贅沢をしても良いと思う。飛行機に多く乗る方はノイズキャンセリングヘッドフォンをオススメしたい。移動疲労が25%減になる。座る時間が多い方は、快適な椅子である。マットレスと同じく、日々8時間付き合うモノなので贅沢をしても良いと思う。ナイロン製のズボンや気持ちよいシーツも自分にとっては必須アイテムだ。これらが集まると「日々の快適度」がアップし、心身の健康度が向上する。時間がなくとも比較的に小さな自己投資ですぐに生活を向上させられるのも素晴らしい。一方で、心の健康を得る方法は人それぞれ異なると思われる。共通して言えることはストレスを減らすことだと感じている。ストレスは、感情の借金のようなもので、感情と現状の差異から生じるように思われる。それを減らすベストな方法は、自分を知り、自分に正直に生きることだと思っている。

備 “Teddy” 耕庸:28期卒

1983年生まれ。 音楽プロデューサー/ハリウッド作曲家エージェント。学院卒業後、ロサンゼルスに留学。カリフォルニア州立大学ノースリッジ校卒業。ハリウッド作曲家のエージェントをしつつ、日本や中国の映画・ドラマ・ゲームの音楽や効果音のプロデュースをする。代表作は大河ドラマ『麒麟がくる』、映画『キングスグレイブ ファイナルファンタジー15』、ゲーム『デビル メイ クライ5』『バイオハザード7』など。

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