iBS外語学院40周年記念実行委員会

「オーストラリアからこんにちは」

編集委員からいきなりメールで卒業生に依頼が届く「RELAY COLUMN」。今回は24期卒業の下川慎吾へ執筆のお願い。オーストラリアで寿司を握りながら、オーストラリアでの生活を振り返ってもらいました。

Words: 下川 “Kit” 慎吾

「オーストラリアから こんにちは」のお題でエッセイを書いてくれ!との依頼がありiPhone片手にポチポチと書いてる現在 、 オーストラリアに来てから12年の年月が経ちました。思い返せば12年前、ブリスベン空港に夜中に到着し、レンタカーを借り、ゴールドコーストにあるCoolangatta(クーランガッタ)を目指しました。何度か道に迷いやっとの思いで着いたこの場所、最初に思った事は“田舎すぎる、何もない!(涙)”でした。日本を出発する前に「サーファーの街」という情報だけしかなく、何も下調べも無しに来たものですから 後悔の念に襲われました。

アメリカで10年間の生活の後、日本で3年間生活し、やっぱり海外がいい、海外ならどこでもいいとの思いだったので、やはりID外語学院の卒業生なのだから「青春とは求めてやまぬこころなり!」の南徹イズムを貫き通すしかなく、今日に至っている感じです。まあ、実際のところ友人の紹介で現在も働いている回転寿司で働きビジネスビザ、その後は永住権ビザも取得し、海外で長く暮らせたらいいなあという考えでした。長い事SUSHIシェフ(寿司シェフではなく、あえてSUSHIシェフ)していたものですから、ここオーストラリアで飲食業界を通して成功したい!の思いでした。

さてさて、オーストラリアで12年も生活し、自分がここで書く事は何か?と考えてもやはり飲食を通してでしか書くことがなく、あまり世界情勢、経済などに詳しくないものですから恥ずかしながらそんな見地でオーストラリアについて書こうかなと思います。

オーストラリアの食文化の発展は本当に目まぐるしいものがあります。舌の肥えた日本人からしたら、来た当初は本当に美味しいものに出会える機会がほとんどありませんでした。これは住んでる地域が田舎だったという原因もありますが、本当にそうでした。12年前ならテリヤキチキンとアボカドを巻いて提供しても問題はありませんでした。しかし、現在は刺身、天ぷら、ラーメン、うどん、そば、タコ焼き、お好み焼き、は当然の定番メニュー。SUSHIに関しても炙り寿司、和牛の握り、北京ダックの握り、大トロ、漬けマグロ、カツオのたたき、つぶ貝、エンガワ、赤貝、などなどバラエティが豊富になり、クオリティーも高くしておかないとお客様も満足しない時代になってきました。

言い方は悪いですが、昔はそんなにこだわらなくても楽々に儲けていたんです。もちろん、昔は昔で新境地を開拓すべく、オーストラリアのお客様が食べた事のない日本食をいかに食べていただくか、の努力と苦労が計り知れないくらいあったと思います。さらにオーストラリアは親日家が多く、日本へ旅行に行かれる人が多いです。だから日本食にも詳しく美味しい日本のホンモノの味を知っている人が少なくありません。それに加えて近年ではインターネットの普及もあり日本食の情報も豊富です。

お店の内装にしても、前までなら何となく日本っぽいものを飾ったり、貼ったりしておけばよかったのですが 味覚の発展と同じ様にお店の空間の演出もレベルを上げないとお客様の満足を得られなくなりました。まあこれはオーストラリアだけじゃなく、世界どこでも同じだと思いますが。

こちらでは日本食以外にもインド料理はじめ、タイ、メキシカン、ギリシャ、ブラジル、イタリアン、フレンチ、ハワイアン、など世界の料理が手軽に食べられるようになってきたのもオーストラリアのいい所ですかね。移民の数と観光客が多いので食文化の多彩さは自然の流れだと思います。スーパーマーケットでもだいたいアジアンコーナーがあるので自宅でも日本食、韓国料理、中華など作ることができます。個人的には、インスタントラーメン、豆腐、そば、うどんなどが普通に売られているのが実にありがたい!

オーストラリアに来て特に痛感したのがオーストラリア人の自然に対するリスペクト、感謝が非常に強い事です。飲食店を経営してると、知らず知らずにプラスティック類を使用する事が多くなってしまいました。お寿司をカバーするもの、テイクアウト用の容器、袋、これに対するお客様からのクレームも少なくありません。挙げ句の果てには 営業終了後にゴミ箱をあさり、このお店はこれだけプラスチックを使って自然破壊をしている、と嫌がらせにも近い動画を作られた日本食屋さんもありました。

現在はコストがかかりますが自然に優しい素材のものを使用するように心がけています。確かに、オーストラリアには美しい自然、眩しすぎる青い空、透き通った青い海、どこまでも続く白い砂浜があります。こんな偉大な自然の中で生活して毎日、毎日、心身共に浄化されています。

ただ、最後にオーストラリアから言わせて下さい。

オーストラリアの女の子、めちゃくちゃレベル高いです!(笑)

Shingo “Kit” SHIMOKAWA:24期卒

1976年生まれ。iBSを卒業後、アメリカへ。サンディエゴで学業と柔術に明け暮れ、寿司職人へ。日本での3年間を経てオーストラリアに移住。現在、サーファーの聖地とされるオーストラリアゴールドコーストの南端であるクーランガッタにて「SUSHI TRAIN Coolangatta」を経営。

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