iBS外語学院40周年記念実行委員会

「アノニマス」― KONA 編集委員 幸野 稔

KONAの記事は写真も文字も誰の作か明記することにしている。それぞれの卒業生が書いていくRelay Columnは言うまでもないが、KONAではサイト全体を意図してそのようにした。インターネットを媒体とするKONAにとって、これは大きな方向付けである。匿名性は今の社会が抱える大きな課題だからだ。

Photo/Text: Minoru Albert Kono

プラスチックのリサイクル運動とかけてスポンサーと解く。その心は匿名によるバイアスである。近い将来、海中のマイクロプラスチックの数が、魚類の数を凌ぐと言われている昨今、プラスチックのリサイクルについてわざわざ議論する余地は残されていないかもしれないが、この問題は社会的に根深い。

少し前まで中国は世界中の廃棄プラスチックを、重量ベースで約8割近く輸入していたと言われている。世界のリサイクル工場だ。それが2018年1月、中国政府は廃棄プラスチック輸入の原則禁止に踏み切った。廃棄プラスチックの処理は金銭的にはオイシイ話だったが、処理に伴って発生する環境汚染があまりにも酷かったのだ。しかし中国が輸入をやめても、世界中のプラスチックごみの量が減るわけではない。かつての中国と同じ現象が、今は東南アジアで起きているという。リサイクルって環境に優しいからするんじゃなかったっけ?

更に時を遡ってみる。そもそもプラスチックのリサイクルを言い出したのは誰だろうか?環境活動家・グループであることは想像に難くない。ではそれを仕掛けたのは?資金を出したのは?プラスチックごみによる汚染は、プラスチックを製造する側ではなく、使う側の責任だと主張したのは誰か?それによって一番儲けたのは誰か?環境保護団体にプラスチック関連業者が資金を出すのには訳がある。彼らは匿名が大好きだ。

資源ごみでプラスチックを分類した事のある方も多いだろう。その後に起きるのは、その殆どが廃棄されてしまうという事実だ。経済的な観点から、プラスチックはいくつかの種類に分類された内の一部しかリサイクルされないのである。後は埋め立て地行きないし燃やされる。世界中のプラスチックの91%はリサイクルされていないというデータがある一方、日本のプラスチックのリサイクル率は84%だ。もちろんここにはトリックがあって、海外ではリサイクルと見なされていない、プラスチックを燃やし熱エネルギーとして利用するサーマルリサイクルで処理された分が含まれている。これは全体の7割だ。つまり、日本人は殆どのプラスチックを燃やしていることになる。今朝細かく仕分けた資源ごみは何のために労力を費やしたのだろうか?この仕組みを作った人々の名前や存在を、私達は知っているだろうか。ここにも匿名が好きな人が居るようだ。

匿名であること自体に善悪は無い。その証拠に、ちょっとしたバズワードにもなっている「アノニマスデザイン」というものがある。スプーンの形をイメージしてみよう。実に機能的で洗練されているが、このデザインを発明した作者は完全にアノニマスだ。スプーンが生まれてから幾多ものデザイナーの手を経て、結果デザイン自体が獲得した匿名性である。この条件下において匿名であることは、逆にスプーンというもののデザインに信頼を与えるものになっている。日本で言えば、着物の定番柄がこれにあたるだろう。面白いもので、これも逆手に取って有名デザイナーがあえて名を伏せて匿名にすることで、自分の商品に付加価値を持たせようとする向きもある。人間だなぁ。

ネットに溢れるニュース記事にも無記名のものが数え切れないほどある。誰が何のために書いたのかわからないものを情報源として消費しているのである。KONAは卒業生の皆様にとにかく楽しんでいただくことを目的に作られた。まだ生まれたばかりで、どの方向に転がっていくかわからないところもある。しかし、それがどのようなものであれ、関わっている人の顔が見えること。この事自体が価値になると、そう信じたい。

Minoru Albert Kono

1984年生まれ。中学不登校からiBSを経てカリフォルニアのコミカレへ。iBS在学中からの性か、パソコンで困ったときのドラえもん的生活を送る。ポケットはなく、青くもない。

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